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AI過渡期のデータと趨勢

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米国のAI世論、利用49%でも不信71%:Pewが見る「使うほど疑う」構造と若年層の逆転

Pew Researchの2026年6月調査で米国成人のAIチャットボット利用は49%に達したが、進歩が「速すぎる」63%、個人情報がより危険になる71%と不信も強い。18〜29歳は50歳以上より悲観的で、Gallup・JFFの独立調査も同じ逆転を裏づける。利用拡大と不信深化の同時進行を一次データで整理する。

| 約15分
米国のAI世論を対比構図で示すインフォグラフィック。見出し「米国のAI世論、使うほど不信深まる」の下、左側にスマートフォンでチャットボットを使う人物と「使っている」49%を示し、右側に不安げに手を上げる人物とひび割れた鍵・警告マークで「速すぎる」63%、「個人情報が危ない」71%を示す。下部には若い人物と年配の人物を並べ、「18〜29歳」48%と「50歳以上」37%という年代別の逆転を示す補助ブロックがある。

米国成人のAI利用は49%、それでも71%が「個人情報がより危険になる」と答えた

米国の成人のうち、AIチャットボットを利用したことがある人の割合は49%に達した。Pew Research Centerが2026年6月17日に公表した調査(米国成人n=5,119、2026年2月17〜23日実施)による数字である(出典:Americans and AI 2026)。

それでも同じ調査で、AIの進歩を「速すぎる」と答えた割合は63%、個人情報が「より危険になる」と答えた割合は71%に上る。社会への影響を「ネガティブ」と評価する回答も40%だった。利用は広がっているのに、不信はそれ以上に広がっている。

利用が広がれば、いずれ評価も好転していくはずだ、という見立ては自然に思える。だがPewの最新調査に、Gallup・Walton Family Foundation・GSV Ventures、Jobs for the Future(JFF)という独立した2系統の調査を重ねると、この見立ては裏切られる。しかも不信が最も強いのは、AIに最も慣れているはずの若年層である。ここから示す数値を読み終えれば、「利用拡大」と「信頼低下」が同時進行しうるという構造を、具体的な数値で説明できるようになるはずだ。

自動車の運転に慣れるほど、事故のニュースに敏感になる感覚に近い。使い慣れることは、必ずしも安心を意味しない。

AIを適切に規制する政府の能力を疑う声は67%に上り、2024年の62%からさらに増えた。共和党支持層では61%、民主党支持層では74%が政府の規制能力に懐疑的である。支持政党による差はあるが、ともに過半数が「政府はAIを制御できない」と見ている点は共通する。

この不信は年代を問わず広がっているように見える。ところが年代別に数字を割ると、直感に反する分布が現れる。

「若者ほどAIに前向き」への反証:18〜29歳が最も悲観的という逆転

AIに最も慣れ親しんでいるはずの若年層が、実は最も悲観的だという逆転が、Pewのデータに表れている。

Pewの年代別データ:社会への悪影響評価は18〜29歳48%、50歳以上37%

AIが社会全体に「悪影響を与えている」と答えた割合は、18〜29歳で48%、30〜49歳で39%、50歳以上で37%だった。年齢が下がるほど悲観の割合が高まるという、年代差の一般的な想定とは逆の並びである。

AIネイティブと呼ばれる世代が、なぜ上の世代よりも悲観的な数字を示すのか。Pew単独の調査であれば、設問設計の偏りを疑う余地も残る。だが同じ逆転は、対象も時期もサンプル数も異なる別々の調査でも確認できる。

独立した2系統の調査が同じ逆転を裏づける

Pewの発見が単一調査の偶然でないことは、Gallup・Walton Family Foundation・GSV Ventures、そしてJobs for the Future(JFF)という、実施主体も対象者も調査時点も異なる別の調査で確認できる。

四つの調査は対象者も実施時期もサンプル数も異なる別々のプロジェクトである。同じ人に同時に尋ねた結果ではない。だからこそ、方法も対象も違う調査が繰り返し同じ方向を示している事実には重みがある。

以下は、それぞれの調査がばらばらに公表している年代別・時点別の数値を、年代を横軸にそろえて本記事用に再構成した表である。Pewの6月報告と7月ショートリードの年代別数値、Gallup・Walton・GSVのZ世代の感情推移、JFFの「AIに詳しくなりたい」割合の推移を並べている。

年代層調査(実施主体・時点・n)指標数値
18〜29歳Pew Research Center(2026年2月17〜23日、n=5,119)「AIは社会に悪影響」と回答48%
30〜49歳同上同上39%
50歳以上同上同上37%
18〜29歳Pew Research Center(2026年6月22〜28日、n=3,488)「米国のAIリーダーシップが極めて/非常に重要」と回答26%
65歳以上同上同上56%
14〜29歳(Z世代)Gallup・Walton Family Foundation・GSV Ventures(2026年2月24日〜3月4日、n=1,572)AIへの「怒り」(前年から)22%→31%
14〜29歳(Z世代)同上AIへの「希望」(前年から)9ポイント低下→18%
全体(年代非公表)Jobs for the Future(2025年11月28日〜12月8日、n=3,020)「AIに詳しくなりたい」(2024年公表→2026年公表)48%→37%

年代の区切り方は調査ごとに異なる。Pewの2本は18〜29歳・30〜49歳・50歳以上(または65歳以上)で区切るのに対し、Gallup・Walton・GSVの調査は14〜29歳をまとめて「Z世代」と定義している。JFFは年代別の内訳を公表しておらず、全体値のみを示した。区切りの違いを揃えずに数値だけを比較すると誤読につながるため、この違いは表内にそのまま残している。

Gallup・Walton Family Foundation・GSV Ventures調査:Z世代の怒りは9ポイント上昇して31%へ

GallupがWalton Family FoundationおよびGSV Venturesと共同で実施した「Voices of Gen Z」調査は、米国の14〜29歳1,572人を対象に、2026年2月24日から3月4日にかけて実施された(出典:Gen Z’s AI Adoption Steady, but Skepticism Climbs、共同発表元のWalton Family Foundation発表)。この調査で、AIへの「怒り」を感じると答えた割合は前年から9ポイント上昇して31%になり、「希望」を感じる割合は9ポイント低下して18%になった。「AIの可能性に興奮している」と答えた割合も、前年から14ポイント低下して22%にとどまった。

利用そのものが大きく後退しているわけではない。調査タイトルは「Adoption Steady, but Skepticism Climbs」、つまり利用は横ばいのまま懐疑だけが強まっている、と題されている。減っているのは利用ではなく、AIに向ける感情の温度である。

JFF調査:「AIに詳しくなりたい」が48%から37%へ低下、害が益を逆転

JFFは、非大卒層・有色人種・逮捕歴のある層を意図的に多めに抽出したうえで米国国勢調査のデータでウェイト調整し、2025年11月28日から12月8日にかけて3,020人を調査した(公表は2026年、出典:AI for Workers & Learners 2026)。この調査でAIについて「もっと詳しくなりたい」と答えた割合は37%で、前回調査時の48%から11ポイント下がった。

AIは「益より害が大きい」と答えた割合は44%で、「益のほうが大きい」の38%を上回った。前回調査では益45%・害41%とほぼ逆の関係にあったため、両調査の間で、この評価は反転したことになる。女性に限ると「害のほうが大きい」と答えた割合は49%とさらに高い。

感情面での後退が確認できたところで、視点を変える。個々人の生活実感ではなく、国家間の競争という枠組みでは、米国民はどう見ているのか。

米国民は自国のAI優位をほとんど信じていない:中国が上36%、米国が上12%

AI開発の主導権をどの国が握っているか、という問いに対する米国民の答えは、自国優位論からはほど遠い。

Pew Research Centerが2026年7月23日に公表した調査(2026年6月22〜28日実施、n=3,488、出典:What Americans think about the global AI race)によると、AI開発で「中国が米国より進んでいる」と答えた割合は36%、「米国が中国より進んでいる」と答えた割合はわずか12%だった。「同程度」は18%、「わからない」と回答した割合も33%に上る。

これはあくまで米国民の認識であり、AI開発水準を客観的に評価した結果ではない。3人に1人が「わからない」と答えていることからも、多くの人がこの問いに確信を持てていないことがうかがえる。

自国のAI主導権について「極めて/非常に重要」と答えた割合は合計43%だった。これに「ある程度重要」と答えた34%を加えると77%になるが、この77%は「極めて/非常に重要」の43%とは異なる区分であり、両者を同じ強さの支持として扱うべきではない。

年代別に見ると、この重要度を「極めて/非常に重要」と答えた割合は18〜29歳で26%にとどまるのに対し、65歳以上では56%に達する。自国のAI主導権を重視する声も、若年層ほど弱い。ここでも、社会への悪影響評価と同じ年代の並びが繰り返されている。

AIが豊かな国と貧しい国の格差を広げると答えた割合は51%だった。自国の優位も確信できず、格差の拡大も予期する。この二つが同時に成り立つのが、米国民のAI観の現在地である。

では、その認識は実測とどれだけ一致するのか。第三者機関が各社のモデルを横並びで測定した独立指標では、オープンウェイト部門の上位10モデルのうち7件を中国系ラボが占めている(2026年8月27日時点)。その内訳は中国系生成AIは今どこまで来たかで整理している。

ここまで並べた数字は、いずれも一次資料の原文に基づく。ただし、数字を鵜呑みにする前に、押さえておくべき注意点がいくつかある。

この数字をどこまで信じてよいか:設問変更・分母・調査時点のずれ

利用49%(2026年)と33%(2024年)を単純に比べて「2年で16ポイント増えた」と語ることもできそうに見える。だがPew自身が脚注で明記している通り、2024年の調査は「チャットボットについて少なくとも少し聞いたことがある人」に対象を限定していた。母集団の定義が異なる数字を、そのまま差し引きすることはできない。ChatGPTの利用44%(2026年)と18%(2023年)についても、同じ制約がある。

前述の通り、四つの調査は互いに独立したプロジェクトであり、「同じ人が」「同じタイミングで」悲観と怒りを示したわけではない。方向の一致を過大に読むべきではないが、偶然だと切り捨てるのも早計だろう。

Pewは2026年3月にも別のショートリードを公表しており(出典:Key findings about how Americans view AI)、そこでは「懸念のほうが強い」50%、「AIに1日数回以上触れる」31%、13〜17歳のチャットボット利用経験64%という数字を示している。これは6月の本体報告とは別の調査であり、両者の差を時系列の変化と読むことはできない。最新の全体像は6月の本体報告を基準とすべきで、3月の数字はあくまで参考値である。

18〜29歳が悲観的な理由について、雇用への不安を挙げる見方もある。JFFの調査はエントリーレベルの職を念頭に置いた設問を含んでおり、その文脈では雇用不安が語られている。ただし、これをもって「若年層の悲観はすべて雇用不安が原因だ」と一般化することはできない。各調査が明言している範囲を超えた因果の断定は避けたい。

なお、これらはいずれも米国の成人(またはZ世代)を対象にした調査であり、日本の世論を代表するものではない。

では、これらの注意点を踏まえてもなお言えることは何か。

利用拡大と不信深化が同時に進む時代に、何を読み取るべきか

ここまでの数字を一言でまとめれば、AIの利用拡大と信頼の低下は、同じ社会の中で並行して進んでいる。しかもその不信は、最もAIに触れている若年層でより強い。

冒頭で提示した問い、利用が広がれば評価もいずれ好転するはずだという見立てが正しいかどうかについて、四つの独立調査が示す答えは否定的である。Pew・Gallup・JFFという異なる主体が、異なる対象に、異なる時期に尋ねた結果が、揃って同じ方向を指している。

実務上は、AI導入を進める組織ほど、利用者の不安・不信をどう扱うかという課題に早く向き合う必要がある。利用率の高さを信頼の証と読み違えると、現場に積み上がっている懸念を見落とすことになりかねない。

米国のデータをどう読むかという方法論については、FRBの統計を教材にした記事で三つの確認の視点を整理している。また、日本国内での個人と組織のAI観の違いについては、総務省令和8年版情報通信白書を扱った記事で詳しく見ている。

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米国統計を読み解く視点、そして国内の個人と組織のAI観の違いについて、あわせて確認できる。

執筆

AI通信 編集部

AIが社会・ビジネス・日常へ浸透する構造を、官公庁・調査機関・一次論文のデータで追っています。速報より文脈、感覚より数字——変化の「なぜ」を理解することで、次の動きが読める記事を目指しています。

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