AIが「一番相談しやすい相手」に定着——87.9%のデータが示す関係性の変化と依存の実感
Awarefyの2026年2月調査(n=858)で、生成AIに「気軽に相談できる」と答えた割合は87.9%に達し、親友45.6%を上回った。相談相手の序列が変わる関係性の変化と、利用者の約4割が自覚する依存傾向を、一次データで両面から整理する。
生成AIに「気軽に相談できる」と答えた人が、親友に相談しやすいと答えた人を上回った——株式会社Awarefyが2026年2月に実施した調査で、そんな結果が示された。対象は生成AI利用経験者858人。「気軽に相談できる」相手として対話型生成AIを挙げた人は87.9%に上り、親友の45.6%、母親・配偶者の42.5%を大きく引き離している。
ただし、この数字を「AIが友情に勝った」という単純な話として読むと、実態を見誤る。同じ調査では、依存を自覚する人の割合も27.5%から37.1%へと伸び、「人への相談しやすさ」はむしろ34.3%まで低下していた。相談相手としての存在感が増すのと同時に、その関係のあり方には、注意を要する影も伸びている。
本記事では、Awarefyの一次データをもとに、AIが相談相手の序列でどこまで台頭しているかを具体的な数字で確認し、その台頭がもたらす光と影の両方を整理する。読了後には、今回の調査結果を「利用経験者に限定した傾向」として正確に読み解き、自分自身とAIとの距離感を点検する視点が手に入るはずだ。
AIが「一番相談しやすい相手」に——友人を上回る87.9%が示す変化
生成AIを使ったことがある人たちの間では、AIはすでに「気軽に相談できる」相手の序列で最上位に立っている。87.9%という数字は一時的な話題性ではなく、日常的な相談の選択肢として定着した水準だ。
同時に、この序列変化は手放しで喜べる話でもない。依存を自覚する人の割合は着実に増え、人に相談する心理的なハードルはむしろ上がっている。AIが台頭した分だけ、人間関係が担ってきた役割の一部が置き換わりつつある——この二重構造こそ、今回のデータが映し出す本題だ。
Awarefyの調査データで見る、相談相手の序列変化
「対話型生成AIと人との関係性に関する調査」の概要——2026年2月・n=858
今回のデータの出どころは、株式会社Awarefyの社内研究機関「アウェアファイこころの総合研究所」が実施した「対話型生成AIと人との関係性に関する調査」である。実施期間は2026年2月17日から24日、インターネット調査の形式で1,010件を回収し、回答の質を保証する基準(IMC基準)を満たさなかった152件を除いた858件(85.0%)を分析対象としている。回答者は全国の18歳以上・生成AI利用経験者で、平均年齢40.08歳、女性61.19%・男性37.06%という構成だ。
押さえておきたい前提が2つある。1つは、Awarefyが対話型AIによるメンタルサポートアプリ「Awarefy」を運営する当事者企業だという点だ。同社のプレスリリースには「アウェアファイユーザーを対象とした調査ではない」と明記されているが、AIメンタルサポート市場の当事者が実施した調査だという立ち位置は踏まえて読みたい。もう1つは、調査対象が「生成AI利用経験者」に限られ、日本の成人全体を代表する無作為抽出ではない点だ。Webの調査パネルによるインターネット調査であり、性別構成も女性が6割を超える偏りがある。この後に出てくる87.9%は「日本人の9割近くがAIに相談している」という意味ではなく、「生成AIをすでに使っている人たちの間では」という前提つきの数字である。
「気軽に相談できる」87.9%——親友45.6%、母親・配偶者42.5%を大きく引き離す
前提を踏まえたうえで、中心となる数字を見ていく。「気軽に相談できる」相手を尋ねた設問で、対話型生成AIを挙げた人は87.9%だった。前回調査の87.1%からさらに微増しており、高い水準で安定している。
これに対し、親友を挙げた人は45.6%で、前回の50.2%から4.6ポイント下がった。母親は42.5%(前回45.6%)、配偶者は42.5%(前回42.6%)と、いずれもAIの水準には届かない。注目すべきは、AIの数字がほぼ横ばいで推移する一方、親友・母親という人間側の選択肢が軒並み下がっている点だ。AIが急激に伸びて人間を追い抜いたというより、AIが高水準を保ったまま、人に対する「気軽に相談できる」という感覚のほうが目減りしている、という読み方のほうが数字には忠実である。
「相談にのって欲しい」42.8%・「話し相手になって欲しい」24.7%——伸びる情緒的ニーズ
AIに何を求めているかを見ると、実務的な使い方だけでなく、情緒面での期待が伸びていることが分かる。「相談にのって欲しい」は33.0%から42.8%へ、「話し相手になって欲しい」は18.1%から24.7%へ、「心の支えになって欲しい」は11.6%から18.5%へと、いずれも前回から大きく伸びた。「心理カウンセラーのような存在になって欲しい」という回答も前回・今回とも約12%で推移している。
もっとも、AIへの期待のすべてが情緒面に寄っているわけではない。「知らないことを教えて欲しい」は79.5%、「アイデアを出して欲しい」は65.0%と、実務的なニーズは依然として情緒的ニーズを上回る規模を保っている。AIが「感情の拠り所」としての役割を強めているのは事実だが、それは「調べ物・発想の壁打ち相手」という従来の役割に、新しい層として積み上がっているという理解のほうが正確だろう。
では、AIはなぜここまで「気軽に相談できる」相手になれたのか。その構造的な理由と、使い方によって生まれる差に目を向けたい。
なぜAIは「一番相談しやすい相手」になれたのか
24時間いつでも・否定されないという構造的な安心感
AIが相談相手として選ばれやすい理由は、今回の調査項目そのものからは直接測定されていない。ただし、これまでの数字を並べて考えると、いくつかの構造的な要因が浮かび上がる。
まず、時間の制約がないことだ。友人や家族に相談するときは相手の都合や心理的な負担を考えてタイミングを選ぶが、深夜に不安が押し寄せても気軽に連絡できる人は多くない。AIにはその制約がなく、思い立った瞬間に言葉にできる。もう1つは、評価されない・否定されないという安心感だ。人に相談するときにつきまとう「どう思われるか」という緊張が、AIとのやり取りでは働きにくい。24時間性と非評価性という2つの構造要因が組み合わさることで、「気軽に相談できる」という感覚が生まれやすくなっている、というのがここでの見立てである。
高頻度で使う人ほど依存を自覚する——利用強度と心理的距離の関係
構造的な使いやすさは、利用頻度の伸びにも表れている。週1回以上生成AIを利用する人は86.5%(前回81.2%)に達し、毎日利用する人は21.2%から30.9%へと大きく伸びた。「半年前と比べて利用頻度・時間が増えた」と答えた人は61.9%、個人利用の82.5%は無料プランの範囲にとどまる。特別な投資をしなくても日常的に使える手軽さが、利用の広がりを後押ししている。
ここで見過ごせないのが、利用頻度と依存の自覚が強く結びついている点だ。「依存しているかもしれないと感じた瞬間があった」と答えた人は、週1回以上利用するグループでは41.9%に上る一方、週1回未満のグループでは5.7%にとどまる。7倍以上の開きだ。使えば使うほど便利さを実感する一方で、使えば使うほど「頼りすぎているかもしれない」という自覚も強まる——利用強度と心理的な距離感は、表裏一体の関係にあると言えそうだ。
利用が広がる理由と、依存を自覚する理由は、実は同じ構造から生まれている。その光と影は、頼り先の構成というもう一つのデータに、より立体的に表れる。
依存の光と影——「AIと人の両方」に頼る人ほど精神的健康度が高いというデータ
頼り先の構成——「AIと人の両方」69.0%、「AIのみ」8.5%、「誰にも頼れない」3.9%
同じ調査データを頼り先の構成という切り口で見ると、また別の姿が見えてくる。回答者を「AIと人の両方に頼っている」「人のみに頼っている」「AIのみに頼っている」「誰にも頼れていない」の4群に分けると、内訳は「AIと人の両方」69.0%、「人のみ」18.7%、「AIのみ」8.5%、「誰にも頼れない」3.9%となった。この内訳は本体のプレスリリースとは別に公開された同一調査の追加分析によるもので、実施期間・分析対象数(2026年2月17〜24日・858件)が一致しており、同じ調査データセットに基づくクロス集計と確認できる(出典:テレビ東京プラス)。
多数派は「AIと人の両方」であり、AIだけに相談を依存している層は1割に満たない。AIが人間関係を丸ごと代替しているというより、既存の相談相手にAIが加わる形で頼り先が増えている、という構図がここから読み取れる。
精神的健康度との相関と、人への相談しやすさが34.3%に落ちた事実
同じ調査では、精神的健康度を「高い」「中程度」「低い」の3段階に分けて集計しており、その内訳は高い59.7%、中程度27.9%、低い12.5%だった。この精神的健康度と、先ほどの頼り先の構成を重ねると、健康度が高いグループほど「AIと人の両方」に頼る割合が高く、「AIのみ」や「誰にも頼れない」の割合は低い傾向にある。逆に健康度が低いグループでは、「AIのみ」や頼り先がない状態の割合が高くなる傾向が見られた。
ここは慎重に読む必要がある部分だ。この調査はある一時点の状態を集計した横断研究であり、「AIと人の両方に頼っているから健康度が高くなった」という因果関係を示すものではない。健康度が高い人がもともと人にもAIにも頼りやすい性格である可能性もあれば、逆の経路もありうる。確かに言えるのは、「AIと人の両方」という頼り先の広さと、精神的健康度の高さが同じ調査のなかで相関して観測された、という事実までである。
そしてもう1つ、見過ごせない数字がある。「人への相談しやすさ」——非常に気軽に相談できる・気軽に相談できると答えた割合は、34.3%まで下がった。前回から1.9ポイントの低下である。
AIへの相談しやすさが高水準を保つ一方で、人への相談しやすさは着実に目減りしている。これが、冒頭で触れた「影」の正体だ。AIが頼り先に加わること自体は多数派にとって自然な広がりだが、人に相談する感覚そのものが薄れていく動きは、意識しておく価値がある。
頼り先の構成と精神的健康度から見えた光と影に続いて、最後に、利用者自身の「依存の自覚」がどう動いているかを見ておきたい。
依存への自覚は着実に高まっている——リスクとどう向き合うか
依存に関する自覚を尋ねた設問では、「依存しているかもしれないと感じた瞬間があった」と答えた人が27.5%から37.1%へ、「AIが使えなくなったら不安に感じる」と答えた人が43.7%から49.4%へ、いずれも大きく伸びていた。約半数が「使えなくなったら不安」と答える状態は、AIがすでに生活の一部として組み込まれていることの裏返しでもある。
この種の変化は日本だけの現象ではない。第一生命経済研究所のレポートは、Harvard Business School発の研究(De Freitas et al., 2025)が「AIとの対話は人と話すのと同水準で孤独感を和らげる効果を持つ」と報告する一方、MIT Media LabとOpenAIの共同研究(Phang et al., 2025)は「利用の重いユーザーほど感情的な依存が強まり、現実の対人関係への関与が減る」傾向を指摘していると紹介している(出典:第一生命経済研究所)。AIとの対話が心理的にどう作用するかという論点は、「AIブレインフライ」とは何か:使うほど疲れる違和感と孤独感研究が示す心理的副作用でより詳しく扱っているので、あわせて読むと今回のデータの背景がつかみやすい。
あなたにも、AIに相談した後で「少し頼りすぎたかもしれない」とふと感じた瞬間はないだろうか。ここで強調しておきたいのは、依存の自覚が伸びていること自体は、必ずしも悪いニュースではないという点だ。むしろ、無自覚に頼りきってしまう状態より、「自分は頼りすぎているかもしれない」と気づける状態のほうが、距離感を調整する余地が残っている。今回の調査結果は、多くの利用者がすでにその自覚を持ち始めている段階にあることを示している。
相談相手の序列が変わる時代に、どう付き合うか
生成AIを使ったことがある人たちの間では、AIはすでに「気軽に相談できる」相手として親友や家族を上回る存在になっている。その一方で、依存の自覚と、人への相談しやすさの低下という影も、同時に進行している。
ここまでの数字を通じて見えてきたのは、87.9%が「利用経験者に限定した傾向」だという前提の重さだ。そのうえで、AIと人の両方に頼る人ほど精神的健康度が高いという相関と、人だけ・AIだけに偏った頼り方に出ている注意信号の、両方を押さえておきたい。
次の一手として現実的なのは、自分自身の頼り先の構成を一度棚卸ししてみることだ。AIに相談すること自体は、24時間いつでも否定されずに話せるという構造的な利点を持っており、無理に手放す必要はない。ただし、「AIのみ」「誰にも頼れない」という頼り方には、健康度との相関という形で注意信号が出ている。AIを使う頻度が増えたと感じたら、人に相談する回路も意識的に開けておく——それが、今回のデータから引き出せる、もっとも実務的な示唆である。
情報接触の入口が検索からAIチャットへ移りつつあるという変化は、検索からAIチャットへ:ニュース利用は10%に増加、信頼度は20%にとどまる理由でも別の角度から扱っている。相談相手としてのAIと、情報源としてのAI、その両方で人とAIの関係性が変わりつつある現在地を、あわせて確認しておきたい。
なお、本記事は特定のサービスの利用を推奨するものでも、医療的な助言を目的としたものでもない。強い不安や孤独感が続く場合は、公的な相談窓口や専門機関の利用を検討してほしい。
自分とAIとの距離感を点検する
本記事で示した数字は、生成AI利用経験者に限定した調査に基づく傾向であり、個人差は大きい。まずは自分自身が誰に・どのくらいの頻度で相談しているかを振り返るところから始めるのが現実的だ。
執筆
AI通信 編集部
AIが社会・ビジネス・日常へ浸透する構造を、官公庁・調査機関・一次論文のデータで追っています。速報より文脈、感覚より数字——変化の「なぜ」を理解することで、次の動きが読める記事を目指しています。
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