生成AI利用率26.7%でも世代差3倍——20代44.7%と60代15.5%が映す生活の情報格差
総務省・令和7年版情報通信白書の一次データで、生成AIの個人利用率26.7%の内訳を世代別に読み解く。20代44.7%に対し60代15.5%と3倍近い開きがあり、家計管理や行政手続き、防災情報の受け取り方にまで及ぶ生活面の実利用格差の中身と、非利用理由から見える埋め方の視点を整理する。
「生成AIの個人利用率は26.7%」という数字は、ニュースやSNSで何度も目にするようになった。だが、この一つの数字だけを見て「日本人の4人に1人が生成AIを使っている」と捉えるのは早計である。実際には、20代の44.7%が使っている一方、60代は15.5%にとどまり、世代によっておよそ3倍近い開きがある。
本記事では、総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年公表、2024年度調査)の一次データをもとに、この世代差の中身を数字で確認する。読了後、読者は「誰がどれだけ使い、使っていない人は何を理由に使わないのか」という実態を正確に把握し、その差が家計管理・行政手続き・防災情報といった生活のどの場面に現れているかを具体的にイメージできる状態になる。あわせて、自分や親世代にとって最初の一歩となる視点も持ち帰れるはずだ。
結論を先に述べる。世代差の核心は「技術についていけない」ことではなく、「使う理由に出会えていない」ことにある。総務省の非利用理由データでは、「自分の生活や業務に必要ない」が40.4%で最多、「使い方がわからない」が38.6%で僅差の2位となっている(出典:総務省 令和7年版 情報通信白書)。この2つの理由は独立した課題ではなく、地続きの構造を持つ。以下、本論に入る。
生成AI利用率26.7%の裏で何が起きているか——世代間3倍の開きを読み解く
総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年公表、2024年度調査)によれば、日本における生成AIの個人利用率は26.7%である。前年度調査の9.1%から大きく伸びており、この1年で生成AIが「一部の詳しい人が使うもの」から「一定数の人が日常的に使うもの」へと移行しつつあることがうかがえる。
ただし、この26.7%という全体平均は、世代間の実態を覆い隠してしまう数字でもある。同白書の年代別データを見ると、20代は44.7%、30代は23.8%、40代は29.6%、50代は19.9%、60代は15.5%となっている。もっとも高い20代ともっとも低い60代の間には、約29ポイントの差があり、比率で見ればおよそ3倍近い開きだ。
なお、本記事は個人の生活実利用に焦点を絞る。企業のAI業務利用率(55.2%)や生成AI導入率の国際比較・業種別データについては、既存記事「日本のAI活用はなぜ遅れているのか」で詳しく扱っているため、そちらを参照してほしい。本記事で扱うのは、あくまで個人が生活の中で生成AIを使っているかどうか、という一段解像度の高い実態である。
世代差が3倍あるという事実そのものよりも、その差が実際の生活のどこに影響するのかの方が、読者にとって切実な問いではないだろうか。以下、白書のデータを起点に、その中身を順に確認していく。
総務省白書が示す世代別内訳:20代44.7%と60代15.5%の断層
まず、数字の出どころと測定方法を確認したうえで、世代間のグラデーションを詳しく見ていく。
個人利用率26.7%はどう測定された数字か
総務省の調査は、「生成AIサービスを使っている、または過去使ったことがある」と回答した個人の割合を集計したものである(図表Ⅰ-1-2-8「生成AIサービス利用経験(年代別、日本)」)。したがって26.7%という数字には、日常的なヘビーユーザーだけでなく、一度試してみたが継続していない人も含まれる。逆に言えば、「今まさに使いこなしている」層に絞れば、実際の比率はさらに低くなる可能性がある。
この点は見落とされがちだが重要だ。26.7%は「利用のハードルを一度でも越えたことがある人」の割合であり、「使いこなしている人」の割合ではない。世代間の差を語るうえでは、この定義を踏まえておく必要がある。
20代・60代だけでなく中間世代はどう推移しているか
数字を並べ直すと、単純な「若い世代ほど高い」という直線的な傾向ではないことがわかる。
- 20代:44.7%
- 30代:23.8%
- 40代:29.6%
- 50代:19.9%
- 60代:15.5%
20代が突出して高く、30代でいったん落ち込み、40代でやや持ち直し、50代・60代で再び下がる。この凹凸は、世代ごとの生成AIとの接点の違いを反映していると考えられる。20代は学業やSNS経由での接触機会が多く、40代は業務での必要性に押される形で触れる機会がある一方、30代は子育てや中堅職としての多忙さで新しいツールへの投資時間が取りにくい層とも重なる。50代・60代になると、業務上の必要に迫られる場面自体が減り、利用率は一段と下がる。
つまり、世代差は単純な「若さ対高齢」の図式ではなく、それぞれのライフステージにおける「触れる理由」の有無によって形作られている。この視点は、次に見る非利用理由のデータとも符合する。
利用しない理由の中身:「必要性を感じない」「使い方がわからない」の先にあるもの
ここまでで、世代別の利用率の凹凸を確認した。では、なぜ使わないのかを見ていく。
総務省の調査では、生成AIを利用しない理由として以下の項目が挙げられている(図表Ⅰ-1-2-9「テキスト生成AIサービスを利用しない理由」)。
最多の「自分の生活や業務に必要ない」(40.4%)は、一見すると「そもそも関心がない」という個人の選択のように読める。しかし、2位の「使い方がわからない」(38.6%)とあわせて見ると、印象が変わる。この2つはほぼ同率であり、独立した2つの理由というより、地続きの1つの構造として捉えたほうが実態に近い。
というのも、「使い方がわからない」状態のままでは、そもそも「自分の生活のどこで役立つか」を具体的に想像しようがないからだ。使い方の見当がつかない人にとって、生成AIは「便利だと聞くが、自分の生活には関係のない道具」として映る。結果として、本来は「使い方がわからない」に分類されるべき人の一部が、「必要ない」という回答に流れ込んでいる可能性がある。
先回りして疑問に答えておくと、「では費用やセキュリティへの不安が壁なのでは」と思う読者もいるだろう。しかし数字を見る限り、「費用が高額である」は3.8%、「情報漏えい・セキュリティ・安全性に不安がある」も3.8%にとどまり、上位2項目とは10倍以上の開きがある。コストや安全性への懸念は、想像されているほど大きな障壁ではない。障壁の正体は、技術的・金銭的なハードルではなく、「自分の生活の中に使い道を見出せていない」という、いわば入口の手前で止まっている状態にある。
格差が生活のどこに現れるか:家計・行政手続き・防災情報の受け取り方
ここまでで、利用率の世代差と非利用理由の構造を確認した。では、この差は実際の生活のどんな場面で、具体的な不利益や機会損失として現れるのか。技術論から離れ、生活シーンに視点を移して考えてみたい。
家計管理と生活情報の格差
生成AIを使い慣れている層は、家計の見直しや支出の整理、生活情報の要約といった作業に生成AIを取り入れ始めている。例えば、複数のクレジットカード明細やレシートの内容をテキストで入力し、支出項目ごとの傾向を整理させたり、長い契約書や約款の要点を平易な言葉で要約させたりする使い方は、すでに一部の利用者の間で定着しつつある。実際、Claude・ChatGPT・Geminiを家事や家計管理に活用する具体的な方法は「家事・育児・家計に活かす実用ガイド」でも紹介している。
一方、生成AIに触れる機会のない層は、こうした作業を従来通り手作業で行うか、あるいは情報収集そのものを省略してしまう。これは単なる「便利さの差」ではない。同じ生活コストの中で、より条件の良い選択肢に気づけるかどうかという、実質的な生活の質の差に直結する。
行政手続き・防災情報という「使えないと不利益になる」場面
家計管理以上に見過ごせないのが、行政手続きと防災情報の受け取り方である。マイナポータルをはじめとする行政のオンライン申請は、案内文が専門的で分かりにくいことが少なくない。生成AIに使い慣れた層は、申請要件や必要書類の説明文を要約させたり、自分の状況に当てはめて「自分は対象になるか」を確認したりする使い方ができる。
防災情報についても同様だ。災害発生時には行政や気象庁から大量の情報が短時間で発信されるが、専門用語や避難区分の表現は必ずしも平易ではない。生成AIを使い慣れていれば、こうした情報を自分や家族に合わせて整理し直すという選択肢を持てる。だが、使い方そのものがわからない層にとっては、こうした選択肢は最初から視界に入らない。
ここで強調しておきたいのは、これらの場面はいずれも「使えたら便利」ではなく「使えないと不利益を被りうる」という性質を持つ点だ。行政手続きの期限を逃す、災害時に必要な情報を読み解けない、といった不利益は、生成AIを使う・使わないという選択の結果というより、そもそも選択肢を持てているかどうかという、より手前の段階の差から生まれている。60代の利用率が20代のおよそ3分の1にとどまっている現状は、この「選択肢を持てるかどうか」の差が高齢世代の生活場面に及んでいる可能性を示している。
断層をどう埋めるか——技術より先に必要な視点
ここまでの内容を一文で言えば、世代間の利用率の差は「技術についていけるかどうか」ではなく「使う理由と使い方に出会えているかどうか」の差である。だとすれば、埋め方の優先順位も自ずと見えてくる。
最初に着手すべきは、生成AIの性能を上げることでも、新機能を追加することでもない。「自分の生活のこの場面で使える」という具体的な使い道を、使ったことのない人に見せることだ。非利用理由のトップ2(必要ない40.4%、使い方がわからない38.6%)が示す通り、多くの人はまだ生成AIを「自分ごと」として捉えられていない。
具体的には、家族内で使い方を共有する、身近な生活シーンに絞った説明から入る、といった小さな橋渡しが効果を持つ。実際、ChatGPTのような主要サービスは基本操作を無料で試せる入口を用意しており、初めて触れる際のハードルは以前より下がっている。使い方の基礎を確認したい場合は「ChatGPT入門ガイド2026年版」のような、生活に近い切り口の解説から入るのも一つの方法だ。
技術が難しいから使われないのではない。使う理由に出会う機会が用意されていないから使われない。この順序を取り違えると、いくら高性能なサービスが登場しても、世代間の断層は埋まらないままになる。
世代間の情報格差を、自分と家族の生活にどう当てはめるか
20代44.7%と60代15.5%という約3倍の開きは、技術力の差ではなく、生活の中で使う理由と使い方に出会えたかどうかの差である。ここまで読んだ読者は、家計管理・行政手続き・防災情報という3つの具体的な生活シーンで、この格差がどう現れるかを把握できたはずだ。
まずは自分の親世代や身近な年配者が、生成AIをどの程度使っているか、使っていないとすれば何が理由なのかを、実際に聞いてみることから始めるのが現実的だ。「必要ない」という答えが返ってきたとしても、それは本当に不要だからなのか、それとも使い道が見えていないだけなのかを見極める余地がある。この一歩が、世代間の情報格差を家庭という最小単位から埋めていく、もっとも確実な出発点になる。
執筆
AI通信 編集部
AIが社会・ビジネス・日常へ浸透する構造を、官公庁・調査機関・一次論文のデータで追っています。速報より文脈、感覚より数字——変化の「なぜ」を理解することで、次の動きが読める記事を目指しています。
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