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AI過渡期のデータと趨勢

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生成AIの世代差は倍率で縮み、差の幅で開いた。令和8年版白書の20代78.2%と60代33.5%

総務省・令和8年版情報通信白書(2025年度調査)で、生成AIの利用経験を年代別に読む。20代は78.2%、60代は33.5%だった。前年の令和7年版と並べると、倍率は約2.9倍から約2.3倍に縮み、差の幅は29.2ポイントから44.7ポイントに開いた。利用しない理由とあわせ、生活の情報格差の中身を整理する。

| 約14分 |
令和7年版と令和8年版の2つの枠に、スマホを操作する20代とタブレットを見る60代の人物が並ぶ図解。令和7年版は20代44.7%・60代15.5%、令和8年版は20代78.2%・60代33.5%。見出しは「生成AIの世代差は倍率で縮み、差の幅で開いた」。下部の2つの要点は「倍率で見ると 約2.9倍 → 約2.3倍 縮んだ」と「差の幅で見ると 開いた」。

生成AIサービスを使ったことがある人は、20代で78.2%、60代で33.5%。総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年公表、2025年度調査)が示した年代別の数字である。1年前の令和7年版(2024年度調査)では、20代が44.7%、60代が15.5%だった。どの年代も大きく伸びたが、世代の開きは縮んだのか、広がったのか。答えは、どの物差しで測るかによって変わる。

本記事では、総務省の情報通信白書の一次データをもとに、この世代差の中身を数字で確認する。読了後、読者は「誰がどれだけ使い、使っていない人は何を理由に使わないのか」という実態を正確に把握し、その差が家計管理・行政手続き・防災情報といった生活のどの場面に現れているかを具体的にイメージできる状態になる。あわせて、自分や親世代にとって最初の一歩となる視点も持ち帰れるはずだ。

結論を先に述べる。世代差の核心は「技術についていけない」ことではなく、「使う理由に出会えていない」ことにあると考えられる。総務省の非利用理由データ(年代別の内訳は公表されていない)では、「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%で最多、「使い方がわからない」が38.8%で僅差の2位となっている(出典:総務省 令和8年版 情報通信白書)。この2つの理由は独立した課題ではなく、地続きの構造を持つ。以下、本論に入る。

利用経験58.8%の裏で、世代差はどう動いたか

総務省「令和8年版 情報通信白書」によれば、生成AIサービスを「使っている(過去使ったことがある)」と答えた人の割合は、日本で58.8%である。2023年度調査の9.1%、2024年度調査の26.7%から大きく伸びた。ただし、2025年度調査からは新たに15〜19歳が調査対象に加わっている。白書は、前年度までと同じ20歳以上にそろえると52.2%になると注記している。

この全体の値は、世代間の実態を覆い隠してしまう数字でもある。同白書の年代別データを見ると、15〜19歳は91.7%、20代は78.2%、30代は56.3%、40代は49.0%、50代は44.2%、60代は33.5%となっている。前年の調査と比べられるよう、15〜19歳を除いて20代と60代を比べると、差は44.7ポイント、倍率ではおよそ2.3倍の開きだ。

前年の令和7年版の年代別の図表(図表Ⅰ-1-2-8)では、20代が44.7%(前の段落の差の44.7ポイントとは別の数字である)、60代が15.5%で、差は29.2ポイント、倍率はおよそ2.9倍だった。倍率で見れば世代差は縮み、差の幅で見れば開いたことになる。1年で60代は約2.2倍、20代は約1.7倍になり、伸びる率は60代のほうが高かった。一方、もとの水準が高い20代のほうが上乗せされたポイント数は大きく、差の幅は広がった。どちらの読み方も同じ数字から導けるため、本記事では2つを並べて示す。

ただし、白書自身は年代別の値を前年と比べていない。回答の選択肢(「使っている(過去使ったことがある)」)と年代の区切りは2つの調査で同じだが、各年度に別々に行われた調査で、標本の取り方が同じかどうかは白書に記載がない。前年との比較は、2つの版の値を並べた本記事独自の整理である。

なお、本記事は個人の生活実利用に焦点を絞る。企業の業務での生成AI利用や生成AI導入率の国際比較・業種別データについては、既存記事「日本のAI活用はなぜ遅れているのか」で詳しく扱っているため、そちらを参照してほしい。本記事で扱うのは、あくまで個人が生活の中で生成AIを使っているかどうか、という一段解像度の高い実態である。

企業側では、同じ令和8年版で、生成AIによる業務変革に「組織的な取り組みはない」と答えた割合が日本27.0%(米国1.4%・独4.9%・中国2.6%)という新たな格差が明らかになった。組織側の最新動向は総務省令和8年版の組織的取組ギャップで確認できる。

では、この世代差は、実際の生活のどこに影響するのか。以下、白書のデータを起点に、その中身を順に確認していく。

総務省白書が示す世代別内訳:20代78.2%と60代33.5%の断層

まず、数字の出どころと測定方法を確認したうえで、世代間のグラデーションを詳しく見ていく。

利用経験58.8%はどう測定された数字か

総務省の調査は、「業務や日常生活において生成AIサービスを一つでも使ったことがあるか」という設問に、「使っている(過去使ったことがある)」と回答した個人の割合を集計したものである(図表Ⅰ-1-1-7「生成AIサービスの利用経験(国別、年齢別)」)。したがって58.8%という数字には、日常的なヘビーユーザーだけでなく、一度試してみたが継続していない人も含まれる。逆に言えば、「今まさに使いこなしている」層に絞れば、実際の割合はさらに低くなる可能性がある。

この点は見落とされがちだが重要だ。58.8%は「利用のハードルを一度でも越えたことがある人」の割合であり、「使いこなしている人」の割合ではない。また、令和8年版の個人向け調査は2026年1〜2月のインターネット調査で、日本の回答者1,236人を15〜19歳から60代までの6つの年代に206人ずつ割り付けている(白書の概要の調査の説明)。全体の58.8%は日本の人口構成に合わせた推計ではない。世代間の差を語るうえでは、これらの定義を踏まえておく必要がある。

20代・60代だけでなく中間世代はどう推移しているか

令和8年版の値を、前年の令和7年版と並べる(括弧内が令和7年版)。

  • 15〜19歳:91.7%(令和7年版は調査対象外)
  • 20代:78.2%(44.7%)
  • 30代:56.3%(23.8%)
  • 40代:49.0%(29.6%)
  • 50代:44.2%(19.9%)
  • 60代:33.5%(15.5%)

令和8年版では、年代が上がるほど利用経験の割合が低い。令和7年版では30代(23.8%)が40代(29.6%)を下回る凹凸があったが、令和8年版では30代(56.3%)が40代(49.0%)を上回り、この凹凸は見られない。白書は年齢階層について、「今回調査を実施した各国とも、若年層を中心として生成AIサービスの利用率が高い傾向が見て取れる」と述べている。

一方で、60代でも3人に1人が使ったことがあるという点は見落とせない。それでも、60代の3人に2人はまだ使ったことがない。使っていない側の理由は、次に見る非利用理由のデータに表れている。

利用しない理由の中身:「必要性を感じない」「使い方がわからない」の先にあるもの

ここまでで、世代別の利用経験の割合と、前年からの動きを確認した。では、なぜ使わないのかを見ていく。

総務省の調査では、生成AIサービスを使ったことがない人に、テキスト生成AIサービスを利用しない理由を尋ねている(図表Ⅰ-1-1-6「テキスト生成AIサービスを利用しない理由(国別)」)。日本の結果は以下のとおりである。

令和7年版でも同じ9項目の選択肢で尋ねており、「必要ない」が40.4%、「使い方がわからない」が38.6%で、上位2項目の顔ぶれと水準はほとんど変わっていない。

最多の「自分の生活や業務に必要ない」(42.4%)は、一見すると「そもそも関心がない」という個人の選択のように読める。しかし、2位の「使い方がわからない」(38.8%)とあわせて見ると、印象が変わる。この2つはほぼ同率であり、独立した2つの理由というより、地続きの1つの構造として捉えたほうが実態に近い。

というのも、「使い方がわからない」状態のままでは、そもそも「自分の生活のどこで役立つか」を具体的に想像しようがないからだ。使い方の見当がつかない人にとって、生成AIは「便利だと聞くが、自分の生活には関係のない道具」として映る。結果として、本来は「使い方がわからない」に分類されるべき人の一部が、「必要ない」という回答に流れ込んでいる可能性がある。

先回りして疑問に答えておくと、「では費用やセキュリティへの不安が壁なのでは」と思う読者もいるだろう。数字を見ると、「費用が高額である」は5.0%、「情報漏えい、セキュリティ、安全性に不安がある」は10.4%である。安全性への不安は令和7年版の3.8%から上がったが、それでも上位2項目の4分の1程度にとどまる。コストや安全性への懸念は、主な障壁とまでは言えない。障壁の中心は、技術的・金銭的なハードルではなく、「自分の生活の中に使い道を見出せていない」という、いわば入口の手前で止まっている状態にある。

国際比較を見ると、日本の特徴は「使い方がわからない」の高さに出ている。白書は、米国やドイツと比べて「自分の生活や業務に必要ない」の割合は日本もそれほど大きく変わらない一方、「使い方がわからない」の割合は、調査した4か国の中で日本が最も高いと指摘している(米国18.5%、ドイツ16.5%、中国32.9%)。

格差が生活のどこに現れるか:家計・行政手続き・防災情報の受け取り方

ここまでで、利用率の世代差と非利用理由の構造を確認した。では、この差は実際の生活のどんな場面で、具体的な不利益や機会損失として現れるのか。技術論から離れ、生活シーンに視点を移して考えてみたい。

家計管理と生活情報の格差

生成AIを使い慣れている層は、家計の見直しや支出の整理、生活情報の要約といった作業に生成AIを取り入れ始めている。例えば、複数のクレジットカード明細やレシートの内容をテキストで入力し、支出項目ごとの傾向を整理させたり、長い契約書や約款の要点を平易な言葉で要約させたりする使い方は、すでに一部の利用者の間で定着しつつある。実際、Claude・ChatGPT・Geminiを家事や家計管理に活用する具体的な方法は「家事・育児・家計に活かす実用ガイド」でも紹介している。

一方、生成AIに触れる機会のない層は、こうした作業を従来通り手作業で行うか、あるいは情報収集そのものを省略してしまう。これは単なる「便利さの差」ではない。同じ生活コストの中で、より条件の良い選択肢に気づけるかどうかという、実質的な生活の質の差に直結する。

行政手続き・防災情報という「使えないと不利益になる」場面

家計管理以上に見過ごせないのが、行政手続きと防災情報の受け取り方である。マイナポータルをはじめとする行政のオンライン申請は、案内文が専門的で分かりにくいことが少なくない。生成AIに使い慣れた層は、申請要件や必要書類の説明文を要約させたり、自分の状況に当てはめて「自分は対象になるか」を確認したりする使い方ができる。

防災情報についても同様だ。災害発生時には行政や気象庁から大量の情報が短時間で発信されるが、専門用語や避難区分の表現は必ずしも平易ではない。生成AIを使い慣れていれば、こうした情報を自分や家族に合わせて整理し直すという選択肢を持てる。だが、使い方そのものがわからない層にとっては、こうした選択肢は最初から視界に入らない。

ここで強調しておきたいのは、これらの場面はいずれも「使えたら便利」ではなく「使えないと不利益を被りうる」という性質を持つ点だ。行政手続きの期限を逃す、災害時に必要な情報を読み解けない、といった不利益は、生成AIを使う・使わないという選択の結果というより、そもそも選択肢を持てているかどうかという、より手前の段階の差から生まれている。60代の利用経験が20代の半分に満たない現状は、この「選択肢を持てるかどうか」の差が高齢世代の生活場面に及んでいる可能性を示している。

断層をどう埋めるか。技術より先に必要な視点

ここまでの内容を一文で言えば、世代間の利用率の差は「技術についていけるかどうか」ではなく「使う理由と使い方に出会えているかどうか」の差である。だとすれば、埋め方の優先順位も自ずと見えてくる。

最初に着手すべきは、生成AIの性能を上げることでも、新機能を追加することでもない。「自分の生活のこの場面で使える」という具体的な使い道を、使ったことのない人に見せることだ。非利用理由のトップ2(必要ない42.4%、使い方がわからない38.8%)が示す通り、使ったことのない人の多くは、まだ生成AIを「自分ごと」として捉えられていない。

具体的には、家族内で使い方を共有する、身近な生活シーンに絞った説明から入る、といった小さな橋渡しが効果を持つ。実際、ChatGPTのような主要サービスは基本操作を無料で試せる入口を用意しており、初めて触れる際のハードルは以前より下がっている。使い方の基礎を確認したい場合は「ChatGPT入門ガイド2026年版」のような、生活に近い切り口の解説から入るのも一つの方法だ。

技術が難しいから使われないのではない。使う理由に出会う機会が用意されていないから使われない。この順序を取り違えると、いくら高性能なサービスが登場しても、世代間の断層は埋まらないままになる。

世代間の情報格差を、自分と家族の生活にどう当てはめるか

20代78.2%と60代33.5%の開きは、倍率では縮み、差の幅では広がった。いずれにしても、それは技術力の差ではなく、生活の中で使う理由と使い方に出会えたかどうかの差である。ここまで読んだ読者は、家計管理・行政手続き・防災情報という3つの具体的な生活シーンで、この格差がどう現れるかを把握できたはずだ。

まずは自分の親世代や身近な年配者が、生成AIをどの程度使っているか、使っていないとすれば何が理由なのかを、実際に聞いてみることから始めるのが現実的だ。「必要ない」という答えが返ってきたとしても、それは本当に不要だからなのか、それとも使い道が見えていないだけなのかを見極める余地がある。この一歩が、世代間の情報格差を家庭という最小単位から埋めていく、もっとも確実な出発点になる。

執筆

AI通信 編集部

AIが社会・ビジネス・日常へ浸透する構造を、官公庁・調査機関・一次論文のデータで追っています。速報より文脈、感覚より数字——変化の「なぜ」を理解することで、次の動きが読める記事を目指しています。

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