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AI過渡期のデータと趨勢

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企画・新規事業での生成AI活用:競合分析からアイデア発散・会議資料までの実践ガイド

企画・新規事業担当者が生成AIを実務で活かすための5つのユースケース(競合分析の整理・アイデア発散・市場顧客リサーチ整理・会議資料骨子・仮説検証の論点出し)を、具体的なプロンプトの方向性とともに解説する。出典不明データや競合の推測断定を避けるための注意点も実務目線でまとめた実践ガイド。

| 約16分
企画AIの5つの使い方を示したインフォグラフィック:競合分析・アイデア発散・リサーチ整理・会議資料骨子・仮説検証の横並びカード

企画部門の担当者が生成AIを使い始めたとき、最初にぶつかる壁は「何に使えるかわからない」ではなく、「使い方が漠然としていて成果に結びつかない」である場合が多い。競合調査に使ってみたが出力が薄い、アイデア出しに試したが結局自分で考え直した——そういった声は実務現場で繰り返し聞かれる。

生成AIを企画業務で活かす本質は「思考の高速化」と「盲点の可視化」である。 情報を検索・収集するのではなく、すでに手元にある情報を整理し、自分では出てこなかった角度を提示させる——この使い方に絞ると、実務への定着度が大きく変わる。

本記事では、企画部門・新規事業担当者が今日から試せる5つのユースケースを順に解説する。各ユースケースには「AIにできること・できないこと」と「実践ワークフロー」の両方を含む。コンプライアンス上の注意点も合わせて整理しており、職場での導入判断にも活用できる。

読了後には、5つのユースケースのどれから始めるかを決め、最初のプロンプトを打てる状態になる——それが本記事のゴールだ。

生成AIのビジネス活用全般については、生成AI ビジネス活用大全で部門横断の整理をしている。本記事は企画部門に特化した実践ガイドとして、その詳細版にあたる。

企画部門が生成AIで変わる5つのシーン——まず全体像を把握する

企画・新規事業業務における生成AIの活用シーンは、大きく5つに分類できる。

ユースケース主な活用場面AIが得意なこと
競合分析の整理競合調査レポート・戦略検討公開情報の構造化・論点抽出
アイデア発散新規事業ブレスト・企画会議制約なき案の量産・視点の多様化
市場・顧客リサーチ整理リサーチ結果の集約・レポート化情報の要約・論点の整理
会議資料・提案骨子経営会議・承認申請書アジェンダから骨格の高速生成
仮説検証の論点出し事業仮説の精緻化・PoC(概念実証)計画反論・穴の提示・盲点の可視化

いずれにも共通する使い方の原則がある。AIに「答えを出させる」のではなく「思考の材料を出させる」という役割分担だ。この分担が機能しているチームほど、生成AIを継続的に使いこなしている。

各ユースケースの詳細は後続のセクションで順に解説する。まず、なぜ企画業務でこの分担が有効なのかを確認する。

なぜ企画・新規事業で生成AIが有効なのか

ここで一度、問いを置きたい。企画業務の中で「時間をかけた割に、答えが出た感覚が薄い」作業はどれか。

多くの場合、答えはこの3つのどれかだ。大量の情報を整理する作業、アイデアを絞り出す作業、資料の骨格を一から立てる作業——これらは「考える」というよりも「素材を揃える」フェーズに近い。生成AIはこの素材を揃えるフェーズを大幅に圧縮できる。

企画業務の構造を分解すると、①情報収集・整理、②仮説形成・アイデア発散、③意思決定・評価、④アウトプット化の4段階に分かれる。このうち③だけは人間が主導しなければならない。①②④の多くは生成AIが補助できる領域だ。

もう一つ重要なのは「盲点の可視化」という機能だ。企画担当者は自分の知識・経験の範囲内でしか問いを立てられない。AIに「この仮説の穴はどこか」「反論を10個挙げてほしい」と問えば、自分では浮かびにくかった角度が提示される。これは生成AIの特性上、既存の議論・知識をパターン化して返す動作から生まれる副次効果だ。

ただし、一点補足しておく。生成AIは正しい答えを保証しない。 特に市場規模・競合数値・業界統計などの具体的な数字は、AIが「それらしい値」を作り出すことがある。企画業務では、AIが生成した数値や事実情報を一次資料で確認する工程を必ず設けることが前提となる。

ここからは5つのユースケースを順に見ていく。

ユースケース1:競合分析——公開情報の整理と論点抽出

競合分析は、企画・新規事業の基礎作業だ。プレスリリース、決算資料、採用情報、製品サイト——公開情報は多いが、それを「判断に使える形」に整理するのに時間がかかる。生成AIはこの「整理と論点抽出」の工程を速くする。

AIにできること・できないこと

生成AIが得意なのは、すでに収集した情報を構造化し、比較軸で並べ、論点を引き出すことだ。「以下の競合A・B・Cの製品概要を読んで、価格帯・ターゲット顧客・差別化軸の3点で比較してほしい」という使い方がその典型だ。

一方で、非公開情報の推測を求めてはいけない。「競合Aの今年の売上はいくらか」「競合Bの内部戦略を推測してほしい」という問いへの回答は、AIが「それらしい推測」を提示するだけで根拠がない。

実践ワークフローと注意点

競合分析でのAI活用は次の手順が実践的だ。

STEP 1:自分で情報を収集する。競合各社の公式サイト・プレスリリース・決算資料などから必要な情報を集める。この収集工程はAIに代行させない。事実の収集は一次情報を自分で確認することが原則だ。

STEP 2:収集した情報をAIに渡して構造化させる。「以下の情報をもとに、競合3社を比較した表を作ってほしい。比較軸は○○・○○・○○でお願いします」という形式で依頼する。

STEP 3:論点抽出を依頼する。「この比較から見えてくる、自社が参入するうえでの課題と機会をそれぞれ3点挙げてほしい」と続けると、整理から示唆まで一気通貫で出力が得られる。

STEP 4:人間がレビューし、一次資料で確認する。AI出力の内容が実際の公開情報と一致しているか、論点の根拠が妥当かを必ず確認する。

競合分析の整理が終わると、次に必要になるのが「ではどう差別化するか」というアイデア発散だ。そのユースケースを次のセクションで見る。


ユースケース2:アイデア発散——制約なき壁打ち相手として使う

新規事業のアイデア出しブレストで「遠慮のある意見しか出てこない」「同じ方向のアイデアが繰り返される」という場面は珍しくない。生成AIはここで「制約なき壁打ち相手」として機能する。

発散フェーズでの活用イメージ

AIとのアイデア発散には、ラバーダック・デバッグに近い機能がある。ラバーダック・デバッグとは、プログラマーが問題をゴム製のアヒルに向かって口に出すだけで整理できるという手法だ。AIも同様で、「こんなアイデアを考えているんだが」と入力するだけで、整理・補完・対案が返ってくる。

発散フェーズでは制約をかけすぎないプロンプトが有効だ。

プロンプト例の方向性

以下のテーマで、新規事業のアイデアを20案出してほしい。
現時点では実現可能性を考慮しなくてよい。
できるだけ異なる業界・手法・対象顧客でバリエーションをつけること。

【テーマ】○○業界の△△課題を解決するサービス

「実現可能性を考慮しなくてよい」という指示が重要だ。AIはデフォルトで現実的な案を出す傾向があるため、発散フェーズでは明示的に制約を外す。

収束・評価は人間が主導する

発散フェーズで20〜30案を出した後、「実現可能性」「自社の強みとの親和性」「市場の存在」という3軸で絞り込む工程は人間が担う。

AIに絞り込みを依頼することは可能だが、「なぜこのアイデアが優れているか」の評価には事業文脈・自社の非公開情報・現場感覚が必要であり、AIの評価軸は一般的なものにとどまる。アイデアの新規性や実現性の判断もAI出力をそのまま根拠にしてはならない。

アイデアが絞り込まれたら、次は「その仮説を支える市場データ」を整理する工程に移る。リサーチ整理のユースケースを次のセクションで見る。


ユースケース3:市場・顧客リサーチ整理——情報を構造化する補助役

市場調査レポート・ユーザーインタビュー記録・顧客アンケート——企画部門はリサーチ素材を大量に持つが、それを整理して論点に落とし込む作業に時間がかかる。生成AIはこの「情報の構造化」に向いている。

リサーチ結果の要約と論点整理

ユーザーインタビューの逐語録が5件あるとする。これをAIに渡して「共通する課題・不満・要望のパターンを抽出してほしい」と依頼するだけで、読み込みと分類の工程が数分になる。

プロンプト例の方向性

以下はユーザーインタビューの逐語録5件です。
これを読んで、共通する課題・不満・要望のパターンをカテゴリー別に整理してください。
カテゴリーは「現在の業務フロー上の課題」「使っているツールへの不満」「理想の状態」の3軸でお願いします。

【逐語録1〜5を貼り付ける】

このプロセスでAIが補助できるのは「パターン化」と「構造化」だ。重要な点は、AIが整理したカテゴリーが本当に現場の実態を反映しているかを、インタビュー経験者が確認することだ。AIはインタビューの文脈・非言語情報を読めないため、「重要だが記録に残りにくいニュアンス」を見落とすことがある。

AI出力の品質チェックについてはAI出力のレビュー基準:誤情報・機密・トーンを5分で見抜くチェックリストが参考になる。

数値・市場規模データの取り扱い注意

市場規模や成長率を企画資料に記載する際は、「○○業界全体の市場規模は○兆円(出典:○○省統計、○年調査)」という形式で一次資料を添えることが前提だ。TAM(Total Addressable Market、獲得可能な最大市場規模)の試算にAIを使う場合も、試算の前提数値は一次資料から取得する。

リサーチ整理が完了したら、そこから会議資料・提案骨子への落とし込みに移る。次のユースケースで見る。


ユースケース4:会議資料・提案骨子——アジェンダから骨格を素早く立てる

新規事業提案書・経営会議資料・社内稟議書——これらの構成を一から考え始めると、骨格を固めるだけで半日かかることがある。生成AIは「アジェンダと要点を入れれば骨格が出てくる」という使い方で、この工程を大幅に短縮できる。

骨子生成のプロセス

会議資料の骨子を生成する基本手順は次の通りだ。

STEP 1:ゴールと聴衆を明示する。「誰に向けた、何を決めてもらうための資料か」が明確でないと骨子がぼやける。

STEP 2:骨子生成を依頼する

プロンプト例の方向性

以下の条件で、経営会議向け新規事業提案のアジェンダと各スライドの見出し・要点(箇条書き3項目以内)を作成してください。

【提案概要】○○という課題を解決するサービスを△△に提供する。収益モデルは○○。
【聴衆】経営陣(CXOレベル)
【決定してほしいこと】次フェーズへのゴーサイン
【スライド枚数目安】8〜10枚
【強調したい差別化軸】○○・○○

STEP 3:出力をたたき台として編集する。AIが出した骨子を「9割方このままで行ける」と思う必要はない。「この方向性は良いが、○○が抜けている」「このスライドの順序を入れ替えたい」という観点で編集する素材として使う。

PoC(概念実証)計画の資料作りにAIを活用する詳細は生成AIのPoC設計ガイドで整理している。

承認を通す資料に仕上げるための人間レビュー

AIが出した骨子は、構成の論理的な整合性はある程度担保されるが、「この会社の意思決定文化ではどう見せると通りやすいか」「このプロジェクトの前史を知っている人がどう読むか」という政治的・文脈的な判断はAIにはできない。

最終的な資料に仕上げる工程は人間が担う。AIの役割は「最初の70点の骨格を30分で出すこと」に限定すると、使い方として安定する。

ここまでで4つのユースケースを見てきた。最後は、企画業務でAIが最も威力を発揮する可能性がある「仮説検証の論点出し」だ。


ユースケース5:仮説検証の論点出し——「盲点」を洗い出す問い合わせ術

新規事業の仮説検証において最も難しいのは「自分が気づいていない穴を見つけること」だ。人間は自分の思考パターンの外に出にくいため、仮説の検証が「確証バイアスの強化」になりやすい。生成AIはここで「悪魔の代弁者」として機能させると有効だ。

仮説の穴を突かせるプロンプト設計

仮説検証の論点出しでは、AIに「賛同」ではなく「反論・懸念・穴」を求めるプロンプトが核になる。

プロンプト例の方向性

以下は私たちが立てている新規事業の仮説です。
この仮説に対して、批判的な立場から反論・懸念・見落としを10点挙げてください。
経営者・顧客・競合・規制当局の4つの視点から、それぞれ2〜3点ずつ出してほしい。

【仮説】○○という顧客課題が存在する。△△という方法で解決できる。市場には□□くらいの需要がある。

「批判的な立場から」「反論を求める」という明示が重要だ。この指示がないと、AIはデフォルトで肯定的な補足を返しやすい。

AIの反論を検証の起点にする

AIが出した10の反論を「潰すべき仮説」として並べ、それぞれについて「どうすれば検証できるか」「検証コストはどれくらいか」を整理すると、PoCの計画に直結する検証ロードマップが作れる。

ここで重要な注意点がある。AIが「この仮説には問題がない」という評価をしても、それはAIが認識できる範囲内での評価にすぎない。業界慣行・非公開の競合動向・特定地域の商習慣など、学習データに含まれにくい情報は評価に反映されない。

ここで問いを一つ置きたい。自社の事業仮説を「外部の知らない人間に10個反論してもらう」機会は、今どれくらいあるか。 社内でのブレストは同じ知識・同じバイアスを共有しているメンバー同士で行うため、限界がある。AIはその制約を一定程度解消できる。

生成AIツールのビジネス用途別比較は生成AIツール選定ガイドを、プロンプト設計の技法はChatGPTプロンプト活用ガイドを参照されたい。

ここまでで5つのユースケースをすべて見てきた。最後に、これらを横断する共通の考え方をまとめる。


生成AIは「壁打ち相手」——判断者はあなた自身だ

5つのユースケースを振り返ると、どれにも同じ構造が見えてくる。

生成AIは思考の素材を出す。判断するのは人間だ。

この役割分担がずれると、AIの出力をそのまま使って困る、という事態が起きる。競合情報の確認を省いて資料に掲載した数値が間違っていた、AIが有望と言ったアイデアをそのまま進めて既存の競合サービスと丸かぶりだったと気づいた——こういった失敗は「AIに任せた」という意識があるときに起きやすい。

一方で、AIを壁打ち相手として正しく使えているチームは、発散の幅が広がり、資料作成の速度が上がり、仮説の精度が高まるという実感を得ている。どこに人間の判断を置くかを設計してから使い始めることが、継続的な成果につながる。

本記事の結論を一文で言えば、「生成AIは企画業務の思考を速く・広くする道具であり、企画の良し悪しを決める判断者の代替ではない」 だ。5つのユースケースのうち、明日の業務で試せそうなものが1つでも見つかっていれば、読んだ価値はあったはずだ。

最初の試みは不完全でかまわない。AIとのやりとりから得られる差分が、次の使い方を磨く材料になる。

営業部門での生成AI活用との住み分けが気になる場合は、営業での生成AI活用も参照されたい。営業は商談・提案活動を中心に整理しており、本記事とは役割が異なる。

企画AI活用を部門横断の視点で確認する

部門別ユースケース・PoC設計・ガバナンス・ROI測定を一冊に整理した生成AIビジネス活用の総合ガイドと、AI出力の品質チェックに役立つレビュー基準の記事を合わせて確認すると、企画部門での導入判断に必要な材料が揃う。

執筆

AI通信 編集部

AIが社会・ビジネス・日常へ浸透する構造を、官公庁・調査機関・一次論文のデータで追っています。速報より文脈、感覚より数字——変化の「なぜ」を理解することで、次の動きが読める記事を目指しています。

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